こんばんは、いもみ🍠です。
本日は、『『古事記』序文㉕~古事記の構成(1)「上巻」~』のご紹介です。
こんばんは、アキです。
主に翻訳と解説を担当しています。
また姓名に関しては、『日下』や『帯』といった訓で読むのが難しいものであっても、これを『玖沙訶』『多羅斯』という様に音で読み易くするという事はせずに、出来るだけ原文に忠実な表記にしました。
前回は古事記の編纂者・太安万侶が記す際の注意点を述べたものでした。
いよいよ序文も大詰め。
今回は序文の構成が語られます。
何事も同じだと思うのですが、全体を何も知らずに取り掛かるよりも、少しでも把握してからの方がより効率的に進むでしょう。
古事記も難しいので、予め全体像を知っておくと読み易いのかな~と思います。
そんな訳で、訳に入る前にちょっと構成について書いてみました。
【古事記の構成について】
以前にも書いたかもしれませんが、今一度おさらいしておくと、『古事記』の原典は上中下の3巻から成っています。
読み方は「上中下」→「じょうちゅうげ」ではなく、それぞれ「上巻(かみつまき)・中巻(なかつまき)・下巻(しもつまき)」です。
ここの「つ」は「~の」という意味です。
(凄くよく出てくるので「つ=~の」と覚えておくといいかもしれません)
それぞれ内容はこんな感じです。
・上巻(かみつまき)
→【神代の物語】が書かれています。
宇宙が形成された後、神々が現れ、イザナギとイザナミの結婚によって大八嶋国(日本列島)が整備されていきます。
この後「すったもんだ」ありますが、天界(高天原)を統治するアマテラスが、地上界(中津国)を統治するオオクニヌシに対して国譲りを交渉し、自らの孫であるニニギを降臨させます。
また「すったもんだ」しますが、ニニギのひ孫の当たるのがカムヤマトイワレビコ(初代・神武天皇)です…と言う感じで終わります。
ちなみに「すったもんだ」話には現在の倫理観・常識で見ると相当「ぶっ飛んだ」話が多く、面白くて飽きません...モヤモヤ感もありますが。
つまり上巻は【神代の時代の世界誕生~初代・天武天皇までの神話がメインのお話】です。
・中巻(なかつまき)
→【神と人の物語】が書かれています。
カムヤマトイワレビコが九州から東征し、大和で即位し初代天皇になりました、という所から始まります。
その後はヤマトタケルノミコトの戦いに多くを割いていて、神功皇后の新羅遠征から第15代・応神天皇の即位までが描かれます。
「初代~15代までの天皇のお話だと長いんじゃ…」と思われるかもしれませんが、2代~11代まではかなり省かれていて逆に「この扱い、どーなの?」という感じです。
ただ省いてるわりには「この話、必要か?」的な小話も散りばめられています。
「神様」が「人(天皇・大王)」に命じた…という形式の物語が多いのですが、次の下巻にはこの様な描写が大幅に減るため、徐々に神々の世界から人の世へ移行していくのが分かります。
そんな訳で中巻は【4世紀ごろ以前の時代である初代・天武天皇~15代・応神天皇即位までの、神の代から天皇の代に移る過渡期がメインのお話】です。
古事記の中で一番面白いお話だと思います。
・下巻(しもつまき)
→神話的な話はほぼ消え、かなり現実的な記述になってきます。
仁徳天皇と雄略天皇の政治の内容が多いですが、その女性問題にも触れていてかなり人間らしい(?)エピソードが増えます。
23代・顕宗天皇、24代・仁賢天皇の兄弟エピソードまで描かれます。
それ以降33代・推古天皇までは系譜のみの記述となっています。
「献上までの締め切りが近くて諦めたのか...」かもしれませんし...太安万侶が書いた711年時点では「25代武烈天皇~33代・推古天皇までの時代は、つい最近だから書かなくても分かるでしょ」っていうノリだったのかもしれません。
なので下巻は【5~7世紀の時代の天皇家の治世と系譜が多い歴史書的なお話(お家騒動や夫婦喧嘩有りの)】です。
『古事記』序文㉕~古事記の構成(1)「上巻」~
大抵所記者 自天地開闢始 以訖于 小治田御世。
故 天御中主神以下 日子波限建鵜草葺不合尊以前 爲上卷。
【読み方】
大抵記(しる)す所は、天地開闢(てんちかいびゃく)自(よ)り始め、以って小治田(おはりだ)の御世、于(ここ)に訖(おわ=いた?)る。
故(ゆえ)に天御中主神(あめのみなかぬしのかみ)以(より)下、日子波限建鵜草葺不合尊(ひこなぎさたけうがやふきあへずのみこと)以(より)前(さき)を上卷(かみつまき)と爲(す=し)
すなわち、天地開闢時の天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)はじめ神々が御誕生になった時から、その神々の子孫であり、初代天皇・神武天皇の父君である天津日高日子波限建鵜葺草葺不合命(あまつひこひこなぎさたけうがやふきあえずのみこと)までの出来事を記したものを上巻とし、
「大抵」は「事柄の主要な部分、大体の様子やあらまし」を意味しています。
「自」は音読みで「~よ(り)」。
意味も「~より、~から」です。
「天地開闢」は「てんちかいびゃく」と読みます。
「天と地ができた世界の始まり」という意味です。
「訖」は読みも意味も同じで「終(わる)、至(る)」です。
「于」も読みも意味も同じで「ここに~」です。
「小治田」は「おはりだ」と読みます。
「小治田」とは「小墾田宮(おはりだのみや)」の事で、推古天皇が造営したとされる皇宮です。
なのでここで言う「小治田御世」とは「推古天皇の時代」という事を指しています。
直訳すると「天地開闢からここに小治田御世に至るを以って、大抵の所を記しました」になりますかね。
この文は「古事記の上中下巻に記録した(書いた)範囲」を言っているのです。
なので「この書(=古事記の事)には、世界の始まりである天地開闢から、小墾田宮(おはりだのみや)において執政された推古天皇の時代までにあった出来事のあらましを記しました」と訳しました。
【何故「〇〇天皇」ではなく「皇居の地名」で表すのか?】
ところで...何で『推古天皇』ではなくて『小治田御世』という宮殿名で表すんでしょうか?
調べても良く分からなかったんですけど、私個人の考えで言うと…
(A)天皇陛下には苗字や姓が無いから。
→ご存じの方も多いかもしれませんが、皇室は唯一無二で日本に一人だけですから、わざわざ姓や苗字を名乗る必要が無いのです。
また苗字や姓というのは、本来天皇が臣下に授けるものでしたから、最高位である天皇に授ける者などいないのです。
ですから、天皇陛下はじめ皇室には苗字や姓は無いのです。
(B)なので識別するため宮号を使った。
...としか考えられません。
なお、自問自答で以下の反論の可能性がありましたが…
Q1:普通に「推古天皇」でいいのでは?
A1:「〇〇天皇」って以前は、【死後に贈られる諡号だった】から無理じゃね?
Q2:じゃあ、今の「令和」みたいに元号使えばいいのでは?
この前の『古事記』序文㉒~太安万侶への勅命~でも言ったけど、【元号が使われ始めたのが645年の「大化」から】だから、それ以前の天皇は何て呼べばいいのよ?だから「元号」は無理だわ。
...と論破できてしまうので、私達の答えは上記の通り「皇室に苗字が無い為、識別するのに皇居のあった場所を書いた」です。間違ってるかも...💦・故 天御中主神以下 日子波限建鵜草葺不合尊以前 爲上卷。
「天御中主神」は「天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)」の事です。
『古事記』では冒頭の天地開闢の時に一番最初に現れた神様です。
「天之御中主神」という字から大体想像できると思いますが「天の真中を領する神」という聞いただけでも凄そうな意味の神名を持つ神様です。
ここから次々と神々が出現していきます。
「日子波限建鵜草葺不合尊」は「天津日高日子波限建鵜葺草葺不合命(あまつひこひこなぎさたけうがやふきあえずのみこと)」が正式な名前です。いや~長い!
長いので「ウガヤフキアエズノミコト」で。
「産屋を鵜の羽で造ったけどまだ屋根がふき終える(完成する)前に生まれた」ので、母である豊玉比売がそのまま名付けた名前です。
こちらの神様は、私達の神社巡りの中でも主祭神として鎮座している神社もありましたので、少し知っています。
覚えておきたいポイントは…
・ウガヤフキアエズはニニギの孫である
・ウガヤフキアエズの子が後の神武天皇である
...でしょうか。
「爲」は「す(る)、な(る)」と読みます。
ここでは「する、おこなう」の意味です。
「以下」と「以前」はそれぞれ「いか」「いぜん」でもいいと思うんですけど、正しく読むなら「以って下(した)」「以って前(さき)」かな~と思います。
「以」は「もって」という読みなんですが、意味として「~から、~より」もあって、原文ではいずれも通じるので私の読み方は「以=~より」としています。
直訳では「天御中主神から日子波限建鵜草葺不合尊までを上巻とし」ですが、ここで上巻を区切ったのは偶然ではなく【天皇という称号が日子波限建鵜草葺不合尊の子の神武天皇から始まったから】だと思います。
以前も書きましたが、「天皇」の称号を初めて使用したのは神武天皇だと考えられています。
(その前までは「大王(おおきみ)」でした)
ですから「この国は遥か昔から神々が統治してたんだよ。そして我々はその神々の子孫なんだ。それでフキアエズの子から天皇家が始まったんだ。でもその前は天皇の称号はまだ無いし、紛らわしいからここで一旦切るね。天皇家のお話の続きは中巻で」ってことなんでしょうから、ちょっとこの辺も加味して…。
「天地開闢時の天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)はじめ神々が御誕生になった時から、その神々の子孫であり、初代天皇・神武天皇の父君である天津日高日子波限建鵜葺草葺不合命(あまつひこひこなぎさたけうがやふきあえずのみこと)までの出来事を記したものを上巻とし」と訳しました。
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以上で『古事記』序文㉕~古事記の構成(1)「上巻」~のご紹介はおしまいです。
次回は『古事記』序文㉕~古事記の構成(2)「中巻」~をご紹介する予定です。
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ここまで読んで頂きありがとうございました_(..)_
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