こんばんは、いもみ🍠です。
本日は、『古事記』本文上巻㊻~桃の名前~のご紹介です。
こんばんは、アキです。
主に翻訳と解説を担当しています。
イザナギは腰に帯びていた十拳剣を引き抜くと、後ろ手に降り回しながら逃げましたが、なおしつこく追ってきます。
あの世とこの世を結ぶ黄泉比良坂(よもつひらさか)の入り口に差し掛かった時に生えていた桃の実を三つ取って投げると、桃の霊力によって追手はことごとく逃げ帰ったのです。
桃には霊力があった...!
死者の国の軍勢もこれさえあれば、寄ってこれないぞ!!
そう言えば、私も桃を食べた後は何だか力が湧いて来ていたような...といういもみの妄言で前回のお話は終わりました。
本日はこの桃に実は名前があった、というお話です。
『古事記』本文上巻㊻~桃の名前~
爾 伊邪那岐命 告其桃子
汝如助吾 於 葦原中國 所有 宇都志伎(此四字以音)青人草之
落苦瀨而 患惚時 可助告
賜名號 意富加牟豆美命(自意至美以音)
【読み方】
爾(ここ)に伊耶那岐命(いざなぎのみこと)其(そ)の桃の子(み=実)に告(の)りたまわく
「汝、吾(われ)を助けしが如(ごと)く、葦原中國(あしはらのなかつくに)に於(お)いて有る宇都志伎(うつしき=現しき)青人草(あおひとくさ)之(の)
苦しき瀬(せ)に落ちて、患(わずら)い惚(ほう)ける時には助ける可(べ)し」と告(の)りたまいて、
意富加牟豆美命(おほかむづみのみこと)という號(よびな=号)を賜(たま)いき
「葦原中國」は序文で何度も登場しましたね。
今一度おさらいすると、古事記の世界では以下の3つの世界があります。
・高天原(たかまのはら)
➩いわゆる天界。神々だけが住む。天界に住む神は「天つ神」と言います。
・葦原中國(あしはらのなかつくに)
➩地上界(=日本)。神々と人が住む。地上界の神は「国つ神」と言います。
・黄泉国(よみのくに)
➩死者の住む国。
※この3つ以外にも夜の食国、根の堅州国などが登場しますが、ここでは省きます<(_ _)>
ご覧の様に、「葦原中國(あしはらのなかつくに)」とは「地上界」のことです。
「宇都志伎」は太安万侶の注釈(此四字以音)を訳さないと読めません。
(此四字以音)➩「此の4字は音を以(もち)いる」➩「【宇都志伎】の4字は音読みを用いて【うつしき】と読んで下さい」ですね。
「宇都志伎」=「うつしき」は「美しい」かと思ってしまいますが、ここは「現」を指しています。
「現」 は訓読みで「うつつ」とも読みます。
意味は「生きていること」です。
「青人草」は「あおひとぐさ」と読みます。
「人民、人間」という意味です。
人が増える事を、草が生い茂るのに例えた表現です。
古事記では国生みや、神生みの場面はあるのですが、人が誕生したという話がありません。ですからここが古事記において初めて人が登場したシーンなのです。...という事は神は国と神を生んだけど、人は産んでいないという事なのでしょうか…?
「落苦瀨而 患惚時」は難しいですね。
個人的な意見なのですが、古事記は大体で良いからまず読むことから入ると結構訳せます。正しく読めているか、キチンと訳せているかはまた別の話ですけど…💦
そんなわけで私は「苦しき瀬(せ)に落ちて、患(わずら)い惚(ほう)ける時には」と読みました。
まず前半部の「落苦瀨而(苦しき瀬(せ)に落ちて)」。
「瀬」は訓読みで「せ」です。
意味は「立場、場所、機会」。
つまり「落苦瀨而」は直訳すると「苦しい立場に落ちた」で良いと思います。
次に後半部の「患惚時(患(わずら)い惚(ほう)ける時には)」。
私は最初「患(わずら)い惚(ほう)ける時には」と読みましたが、調べていたら「患惚」で「たしな(む)」と読むことが出来ると分かりました。
読み方は多分、「患惚=たしな(む)」が正しいと思います。
ですが「患(わずら)い惚(ほう)ける」の方が訳しやすい為、いもみの日記ではこっちの読み方を採用しています<(_ _)>
次は漢字の意味を見て行こうと思います。
患(わずらう)➩災い、心配
惚(ほうける)➩心を奪われて、うっとりする
直訳すれば「災いや心配で心を奪われ、うっとりする」ですが、「心配で心を奪われ」は要するに「思い悩む」状態だと思います。
つまり「落苦瀨而 患惚時」は「苦しい立場に陥って思い悩む時には」と訳しました。
「可助告」は「可」を「~べ(し」と読めば簡単です。
「助ける可(べ)し、と告ぐ」という感じでしょう。
・賜名號 意富加牟豆美命(自意至美以音)
「賜名號」は「號」が難しい感じですね。
これは「號」=「号」で「よびな」と読みます。
意味も同じで「呼び名、名前」です。
「意富加牟豆美命(自意至美以音)」はまず太安万侶の注釈(自意至美以音)を訳します。
自は「~よ(り)」、至は「~に至る」。
つまり「自A至B」は「AからBまで」の意味ですから、「意富加牟豆美命(自意至美以音)」は…
「【意富加牟豆美命】の【意】から【美】までは音読みを用いて【おほかむづみ(のみこと)】と読んで下さい」になります。
「名のり」について
桃の名前は「意富加牟豆美命」。
これを音読みして「おほかむづみのみこと」。
ねぇ、「意」の音読みって「い」じゃないの?
「意」の音読みは「い」であってるわよ?
じゃあ「いほかむづみのみこと」じゃないとおかしくない?
これは「名のり」なんだと思うわ。
漢字の読み方は音と訓があるでしょ?だけどそれとは別に「名のり」という読み方もあるの。
つまり漢字には音、訓、名のりの3つの読み方があるのよ。
「名のり」??
「名のり」は簡単に言うと【人の名前に限って使われてきた漢字の読み方】かな?
人名で多い漢字だと…そうね「和」を例えにしてみましょうか。
「和」の字の音は「わ、お、か」。
訓だと「やわ、なご、あ、な」。
でもお名前に「正和(まさかず)」さんや「日和(ひより)」さんとかいらっしゃるけど、音訓どちらにも無いでしょ?
おぉ...「和 名のり」で検索したら音訓以外に「あい、ちか、とし、やす...」沢山あるね。
同じように「意 名のり」で検索してみて?
きっと「意」を「お」と読むって出てくるから。
...あれ?「お」って読まないみたいよ?
え...?マジで??どれどれ...。
...。
「胃 名のり」で検索してるわよ、アンタ...。
※「意」の名のりに「お」はあります。
気を付けないと。
お前だろーが…。
この様に、①漢字には音訓読み以外にも「名のり」という読み方もある。
②逆に「名のり」の読みが無い漢字もある(「胃」に名のりはありません)。
③「名のり」の読みは人名に限られる(今回は桃の名だが…)
という事は古事記を読むうえで覚えておきたいですね!
以上で『古事記』本文上巻㊻~桃の名前~のご紹介はおしまいです。
次回は『古事記』本文上巻㊼~一日千人を絞め殺し、千五百の産屋を建てる(1)~をご紹介する予定です。
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ここまで読んで頂きありがとうございました_(..)_
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