いもみの日記

御朱印集めが趣味のOL(お芋好き女子)です。いろんな神社やグルメを紹介します!

『古事記』序文④~鏡と珠と剣と議~

こんばんは、いもみ🍠です。
本日は、『『古事記』序文④~鏡と珠と剣と議~』のご紹介です。

こんばんは、アキです。
主に翻訳と解説を担当しています。


【前回のあらすじ】
ここまで述べた神話の様な歴史の起源のお話は、大昔のことですから、私達にはハッキリとは分かりません。
ですから、この国の国土が出来上がっていった様子や、この国の島々が産まれた由来は、昔からの言い伝えや教えによって知ることが出来ます。
この国が興ったのは遥か昔のことですけれど、世界に神々が誕生し、やがて人間が成立したという太古の出来事も、それらの経緯を伝え聞いてきた先の世の知徳が優れた人物を頼ることで、明らかになるのです。

前回のお話は、『最古の時代の出来事は、先人からの教えと伝えによって知ることが出来る』という【古事記の思想の前提】のお話でした。
古事記の目的は、この国の【統治の正統性を宣言すること】です。
『最古の時代にこういうことがあって、高天原の神を祖先にもつ天皇が世を継いで治めてきたんだよ』ということを語ることで、統治の正統性を宣言しているのだと思います。


【原文と読み方】
【原文】寔知 懸鏡吐珠 而百王相續 喫劒切蛇 以萬神蕃息 與議安河而平天下 論小濱而淸國土

【読み方】寔(まこと)に知る。鏡を懸け、珠を吐きて、百の王相続き、剣を喫(か)み、蛇(おろち)を切り、萬の神蕃息(はんそく)せしことを。
安(やす)の河に議(はか)りて、天下を平らげ、小浜(おばま)に論(あげつら)いて国土を清めたまう。

【訳】
本当にその通りなのです。
海原統治の役目を怠り追放されたスサノオは、アマテラスが統治する高天の原に向かい、国の乗っ取りの疑いをかけられますが、潔白証明の為、神意がどちらにあるか誓約をたてます。
お互いの身につけたものを交換し、それを口にして息を吐いて子(神)を成し、その結果で占うことにしたのです。
アマテラスがスサノオの剣を、スサノオもアマテラスの数珠を、それぞれ噛み砕いた後息を吐きました。
誓約の結果、スサノオに邪心が無いことが示され、高天の原で過ごすスサノオでしたが、乱行を繰り返したことで、アマテラスは天の岩屋に隠れてしまいます。
天の岩屋からアマテラスが出て、高天の原を追放されたスサノオは、その後地上でヤマタノオロチを退治しました。
…こうした過程のなかで、多くの神々が登場し、大いに増えました。
そして、こういった古代の歴史は、歴代の天皇によって代々言い伝えられてきたのです。

やがて、アマテラスのもとに『オオクニヌシの治める葦原中つ国がひどく騒がしい』と報告が入ります。
そこで、アマテラスは葦原中つ国を譲渡させるための説得に、どの神を使いに出すかを、八百万の神を天の安河の河原に集めて会議を開きました。
タケミカヅチという神が遣わされ、小浜(出雲国・稲佐の浜)で国譲りの交渉が行われた結果、葦原中つ国は譲られることになりました。
国譲りで統治者がオオクニヌシからアマテラスに移ったことで、何かと騒がしかった葦原中つ国も静かに治まったのでした。

【解説】
寔知=「寔」は読みも意味も「まことに」です。
直訳すると「まことに知る」で、ちょっと分かりずらいです。
「まことに知る」は、前文の『太古の出来事は、先の世の知徳が優れた人物を頼ることで明らかになる』と言う事が「本当に分かります」と同意している様に読めます。
なので前文を肯定する「(前文で話したことは)本当にその通りなのです」と訳してみました。

懸鏡吐珠 而百王相續 喫劒切蛇
ちょっと長いので、ここでは2つに分けて説明していきます。
①「懸鏡」「吐珠」「喫劒」「切蛇」は古事記本文に出てくるエピソードを凄~く端折って取り上げています。
これをそれぞれ訳すと以下の通りですが…。
「懸鏡」→「鏡をかける」
「吐珠」→「数珠を吐く」
「喫劒」→「剣を噛む」
「切蛇」→「蛇(ヤマタノオロチ)を切る」
直訳では意味不明ですし、順番も異なるので、ここはこのエピソードをご紹介して説明します。

天の岩屋戸とヤマタノオロチ退治
このエピソードの場面は、イザナミが死んでイザナギが黄泉の国から帰ってきた後、アマテラス・スサノオ・ツクヨミの三貴子が生まれ、それぞれに国の統治を任せた...以降のお話です。
『スサノオは海原の統治を任されますが、母(イザナギ)を恋しがって泣いてばかり…。
役目を果たさないスサノオを、イザナギは怒って追放してしまいます。
スサノオは別れを告げようと、姉のアマテラスが統治する高天の原に向かいます…向かうのですが、天地を揺るがす程のもの凄い勢いだったので、アマテラスはスサノオが国を奪いに来た、と思ってしまいます。弟も弟ですが、姉も姉です。
そこで心が潔白かどうかを確かめるために、誓約(うけい)をたてます。
これはお互いが身に着けているものを交換して、それを噛み砕いて、息を吐くという感じです。
この辺は常人には理解できませんが…まぁ話を進めます。
ちなみに、この時アマテラスはスサノオの剣を噛みます。※ここが【喫劒】です。
スサノオはアマテラスの数珠を噛み、息を吐きます。※ここが【吐珠】です。
この部分は、本文に進んだときに詳しくお話しますが、とにかくスサノオは心の潔白を証明出来て、アマテラスが統治する高天の原で過ごします。
ところがスサノオが大暴れ...田を荒らしたり、神殿を汚物で汚したりします。
弟をかばい続けるアマテラスですが、牛の死体を投げ込んで死人が出るというとんでもない事件を起こし、あまりの乱行に心を痛めて岩屋に隠れてしまいます。
アマテラスを岩屋から出す過程で、踊ったり、鏡をかざして自らの姿を見せたりします。※ここが【懸鏡】です。
アマテラスが出てきた後、当然ですがスサノオは「混乱の罪を償え」として高天の原を追放されます。
追放されたスサノオは泣いている父娘に出会います。
そこでヤマタノオロチの話を聞き、退治します。※ここが【切蛇】です。

とても長くなってしまいましたが、この4つのエピソードを語っているのです。

「而百王相續」
「百王」は百人の王ではなくて「多くの王=歴代の天皇」の意味だと思います。
「相續」は「相続した」の意味です。
「百王相續」はつまり「(①の4つのエピソードなど古代の歴史を)歴代の天皇が代々言い伝えてきた」と訳すとしっくり来たのでこれで行きます。


以萬神蕃息
「萬神」は「万神」=「万(よろず)の神々」という意味でしょう。
ちなみに「万(よろず)」は「様々の~」という意味です。
「蕃息」は「はんそく」と読みます。
「盛んに増える、繁殖する」と言う意味です。
なので「様々な神が大いに増えた」で良さそうですが、どうして増えたか省かれているので、ちょっと分かりずらいです。
上記の「懸鏡」「吐珠」「喫劒」「切蛇」では、「吐珠」「喫劒」の場面で8人の神が、「懸鏡」の岩屋の場面ではオモイカネやアメノウズメなど多くの神が、「切蛇」ではオオヤマツミノカミなどの神が登場してきます。
なので、「(「懸鏡」「吐珠」「喫劒」「切蛇」の)過程で神が(多く登場してきて)大いに増えた」というニュアンスで訳しています。


以下の「與議安河而平天下 論小濱而淸國土」は『古事記』本文の【国譲り】の場面です。
ここもかなりの端折り具合で、「誰が」という主語も無いので直訳では非常に分かりずらいです。
なので、国譲りの場面をお話してから、解説したいと思います。

【国譲りのお話】
地上(葦原中つ国)はオオクニヌシの国造りが進んでいました。
この様子を聞いたアマテラスは安河(高天原にあるという川)に多くの神を集め「葦原中つ国は我が子が治める国であるのに、乱暴な土着の神が多くいる。どの神を遣わして、これを平定するべきだろうか?」と尋ねます。
※ここが【與議安河而平天下】です。

会議の結果、まずアメノホヒ(アマテラスの息子)が葦原中つ国を譲るよう説得に向かいます。しかし連絡のないまま3年たちました…。
仕方ないので次にアメワカヒコを行かせましたが、オオクニヌシの娘と結婚して8年も連絡しませんでした…。
モラルとか無いの?と思ってしまいますが、この時代にそんな言葉はまだ無い!と思いましょう。そうでなければ話が先に進みません。

(その後もすったもんだありますが、今は関係ないので中略)
そして最後にタケミカヅチという神が遣わされて、小浜(出雲国・稲佐の浜)で国譲りの交渉が行われ(ここでもすったもんだあったけど)、葦原中つ国は譲られることになりました。
※ここが【論小濱而淸國土】です。

與議安河而平天下
「與議」は「議を興す」、つまり「会議した」と言う意味です。
「安河」は日本神話で登場する「高天原にあるという川」です。
「平」は「たいら(げる)」と読みました。
意味は「たいらげる、しずめる=平定」ですが武力を用いる訳ではない(一部用いてるけど…)ので、「国の譲渡を説得する」というニュアンスで訳しました。
ですから
「葦原中つ国の譲渡させるための説得に、どの神を使いに出すかを、八百万の神を天の安河の河原に集めて会議を開きました」と訳しました。

論小濱而淸國土
「論」は「議論」ですが、ここでは国譲りの「交渉」という訳がシックリしたのでこれで。
「小濱」は「小浜」。
【国譲り】でアマテラスが遣わしたタケミカズチがオオクニヌシと交渉した出雲国の稲佐の浜です。
「淸國土」は「清国土」。
ここはちょっと意味が分からなかったのですが、国譲りのエピソードの冒頭にアマテラスが地上の偵察に向かわせた神(オシホミミ)が『(オオクニヌシの治める)葦原の水穗の国(葦原中つ国)はひどく騒がしい』と報告しているので、「国譲りで統治者がオオクニヌシからアマテラスに移って騒ぎが収まった」...という感じで訳しました。

以上で『古事記』序文④~鏡と珠と剣と議~のご紹介はおしまいです。

次回は『古事記』序文⑤~天孫降臨と初代天皇・神武天皇即位~をご紹介する予定です。


ここまで読んで頂きありがとうございました_(..)_
本日のおまけは一番下にあります。

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