いもみの日記

御朱印集めが趣味のOL(お芋好き女子)です。いろんな神社やグルメを紹介します!

『古事記』本文上巻64~イザナギ怒って隠居する~

こんばんは、いもみ🍠です。
本日は、『古事記』本文上巻64~イザナギ怒って隠居する~のご紹介です。

こんばんは、アキです。
主に翻訳と解説を担当しています。

【前回のあらすじ】
その有様を見たイザナギが、スサノオに仰せになられました。
「何故お前は私が命じた海原を統治せずに泣き喚いているのか?」
これに対しスサノオはこうお答えになりました。
「私は亡き母上がいる根之堅洲國に行きたいと願い望んでいるために泣いているのです」

亡き母に会いたいがために泣く。
とても自然なことだと思います。
しかしスサノオは、イザナギの禊で生まれました。
つまり母(イザナミ)はいないんじゃ…?
とても自然な疑問だと思います。


『古事記』本文上巻64~イザナギ怒って隠居する~

【原文と読み方】
【原文】
爾 伊邪那岐大御神 大忿怒 詔 
然者 汝不可住此國
乃 神夜良比爾 夜良比賜也(自夜以下七字以音)
故 其伊邪那岐大神者 坐 淡海之多賀也

【読み方】
爾(ここ)に伊耶那岐大御神(いざなぎおおみかみ)大(おお)いに忿怒(ふんぬ)して詔(の)りたまはく、
「然(しか)らば汝(なんじ)は此(こ)の國に不可住(すまわざるべし)」
乃(すなわ)ち、神(かむ)夜良比爾(やらひに)夜良比(やらひ)賜(たま)わりき
(【夜】自(よ)り以下の七字は音を以(もち)いる)
故(かれ)其(そ)の伊邪那岐大神者(いざなぎおおみかみ)、淡海(あわじ=淡路)之(の)多賀(たが)に坐(ましま)す

【訳】
それを聞いたイザナギはたいへん怒って、
「役目を果たさないと言うのならば、お前はもうこの国に住んではならない!」
と言って、スサノオを追放してしまったのです。
(註:神夜良比爾 夜良比は【夜】から以下の7字は音読みを用いて【やらひにやらひ】と読んで下さい)
そしてイザナギは、淡路の多賀の社に(※「近江の多賀神社」の説もあります)行かれました。

【解説】
爾 伊邪那岐大御神 大忿怒 詔 然者 汝不可住此國

「忿怒」は「ふんぬ」と読みました。
※「ふんど」でも良いと思います。何故「ふんぬ」と呼んだかは後述します<(_ _)>
意味は「ひどく怒ること」ですね。

【呉音】について

なお「ふんぬ」という読み方は呉音と言います。
呉音はザックリですが簡単に言うと、中国南部の漢字音です。
この呉音に対し、中国北部の漢字音を漢音と言います。

普段私達が使用しているのは漢音なのですが、古事記では訓読みと共に呉音が当て字されています。
呉音が日本に伝わってきたのは、実は漢音より古く(漢音は7~8世紀頃日本に伝わった様ですよ)、その為歴史の古い言葉などには呉音が使われていることが多いのです。
また人名や仏教用語などにも呉音が用いられているようです。

なので「忿怒」を呉音の「ふんぬ」と読んでみました。
以上【呉音】についてでした<(_ _)>


「不可住」ですが、漢字を見れば「あ~『住んじゃダメ』って事ね?」と分かりますが、読み方はちょっと難しくないですか?
「不可」を「ふか」と読んでしまうと、わけ分からなくなるので私は「不可住(すまわざるべし)」と読みました。
「可」には訓読みで「~べし」という読み方があるのでこれを採用、「不可」を「~ざるべし」と読んでみました。


乃 神夜良比爾 夜良比賜也(自夜以下七字以音)
ここはまず太安万侶の注釈(自夜以下七字以音)から見て行きます。
(自夜以下七字以音)➩「【夜】自(よ)り以下の7字は音を以(もち)いる」➩「神夜良比爾 夜良比は【夜】から以下の7字は音読みを用いて【やらひにやらひ】と読んで下さい」でしょう。

なので「神夜良比爾 夜良比」は「神(かむ)やらひにやらひ」と読みます。
と言っても「やらひにやらひ」と言われても意味が分かりません。
なので調べてみました。

まず「やらひ」「遣らひ」と書きます。
意味は「追い払う、追い出す」です。

ちなみに節分で「鬼は外」とやりますよね?
「鬼を追い払う」儀式は平安時代に既に行われていました。
この儀式を【追儺(ついな)】と言います。

疫鬼や疫神を払う儀式である【追儺(ついな)】。
色んな呼び名があって、この中に【鬼儺(おにやらい)】という呼び名があります。
この「おにやらい」は「鬼遣」という表記もあるのです。

疫鬼を追い払う儀式=追儺(ついな)=鬼儺(おにやらい)=鬼遣、という事ですね。
これで「遣(やらい)」が「追い払う」意味だと分かるかと思います。

え?説明が長いですか??
ははははは...(笑ってごまかす)

この文の意味は「乃ち、神を追い払ってしまいました」となります。
ここで言う「神」とは勿論「スサノオ」のことですから「スサノオを追い払ってしまいました」で良いと思います。


故 其伊邪那岐大神者 坐 淡海之多賀也
「坐」は「ましま(す)」と読みます。
「おわ(す)」とも読むのですが、この二つの読み方に共通するのは尊敬語という所ですね。
意味は「いる、ある、行く」です。

「淡海之多賀」は「淡海(おうみ)の多賀」と読めます。
なので「淡海(おうみ)」=「近江(現在の滋賀県)」の事だから、「淡海之多賀」とは「近江(滋賀県)にある多賀神社」という説もあります。
ちなみに地図はこちらです。

ですが、日本書記にはイザナギは「構幽宮於淡路之洲(淡路島の幽宮に構えた)」とあることから「淡海」は「淡路(島)」のことであるようです。
確かにイザナギが愛する妻であるイザナミと初めて生んだ国に戻った...と考えるのが妥当な気がします。
なので今回の読みと訳でも「淡海」=「淡路(島)」説を取っています。
ちなみにココ。

以上で『古事記』本文上巻64~イザナギ怒って隠居する~のご紹介はおしまいです。

次回は『古事記』本文上巻65~天地が揺れて誤解する~をご紹介する予定です。

ここまで読んで頂きありがとうございました_(..)_
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本日のオマケ

『古事記』本文上巻63~スサノオ追放~

こんばんは、いもみ🍠です。
本日は、『古事記』本文上巻63~スサノオ追放~のご紹介です。

こんばんは、アキです。
主に翻訳と解説を担当しています。

【前回のあらすじ】
スサノオがあまりに激しく泣くので、山は枯れ、川も海も干上がってしまうという有様でした。
泣いてばかりで海原を統治しないために、悪しき神々の気配が世界に満ちあふれ、あらゆる荒ぶる神々はますます盛んになりました。

登場したばかりですが、泣いてばかりで統治放棄。
山は枯れるわ、海川は干上がるわ...挙句に悪神まで溢れ出すわ...。
困ったもんです。
「ところで何で泣いてるの?」という事が今回明らかになります。


『古事記』本文上巻63~スサノオ追放~

【原文と読み方】
【原文】
故 伊邪那岐大御神 詔 速須佐之男命
何由以汝 不治所事依之國而 哭伊佐知流 
爾答白 僕者欲 罷妣國 根之堅洲國 故哭

【読み方】
故(かれ)伊耶那岐大御神(いざなぎのおおみかみ)速須佐男命(すさのおのみこと)に詔(の)りたまはく
「何(なに)に由(より)て汝(なんじ)を以って、言依(ことよ)せ之(の)國を不治(おさめず)して哭き伊佐知流(いさちる)」
爾(ここ)に答え白(もうす)
「僕(やつがれ)は妣(なきはは)の國の根之堅洲國(ねのかたすくに)に罷(まか)らんと欲(ほ)るが故(ゆえ)に哭(な)く」

【訳】
その有様を見たイザナギが、スサノオに仰せになられました。
「何故お前は私が命じた海原を統治せずに泣き喚いているのか?」
これに対しスサノオはこうお答えになりました。
「私は亡き母上がいる根之堅洲國に行きたいと願い望んでいるために泣いているのです」

【スサノオMemo】

【解説】
故 伊邪那岐大御神 詔 速須佐之男命
「伊邪那岐大御神(いざなぎのおおみかみ)」とイザナギの名前がここから変わっています。
この変化については後述の【イザナギの名前が変わっている】についてをご覧ください<(_ _)>
この解説の下にありますよ。


何由以汝 不治所事依之國而 哭伊佐知流
「由」は読み方に悩んだのですが、名のりで「より」と読むのでこれを採用しました。
意味は「理由、わけ」です。
なので「何由以汝」は「何(なに)に由(より)て汝(なんじ)を以って」と読みました。
「どういう理由で貴方は~なのか?」という感じの意味でしょう。

「言依」は以前も出てきましたね。
「ことよせ」と読みます。
意味は「委ねる」です。
つまり「不治所事依之國而」は「委ねた国を治めない」という感じですね。

「哭伊佐知流」についてですが、ここを読むには少し前に登場した文を思い出さなければなりません。
『古事記』本文上巻61~スサノオ泣く~で登場した『啼伊佐知伎也(自伊下四字以音 下效此)』の部分です。

もう一度説明しますと、まずこの文は…
①『伊佐知伎の【伊】から下の4字は音読みを用いて【いさちき】と読んで下さい。以下もこれに倣い読んで下さい』と訳します。
②なので『啼伊佐知伎』は『啼いさちき』と読みます。
③「いさちき(いさちる)」は「はげしく泣く、慟哭、泣き叫ぶ」という意味です。
...でした。

ここでポイントは①の『伊佐知伎は【いさちき】と読む。以下もこれに倣い読む』です。
つまり「哭伊佐知流」は「伊佐知伎」に倣い読めば良いのです。
従って「哭伊佐知流」の「伊佐知流」は音読みで「いさちる」と読みます。
言葉の意味は同じですね。


爾答白 僕者欲 罷妣國 根之堅洲國 故哭
「答白」は以前『古事記』本文上巻㊴~黄泉の国の食べ物を食べたので~でも出てきました。

この「白」には...
訓読みで「もうす」。
意味として「ありのままに言う、申し上げる」とあったので、ちょっと自信が無いけど「答え白(もうす)」と読むことにしました。
なので今回もこの読み方で行きます。

「欲」は「ほ(る)」と読むと思います。
ですが「ほっ(す)」でもいいかも...?
ここでの意味は「願う、望む」で良いでしょう。

「罷」は「まか(る)」と読みます。
「行く、退出する」という意味があります。

「妣」は「なきはは」と読みます。
つまり「亡き母」です。
イザナミの事ですよね。

「根之堅洲國」は「ねのかたすくに」と読みます。
これは後述いたします(解説の後です)

【イザナギの名前が変わっている】について

あれ?イザナギの表記がまた変わったね?
「伊邪那伎命(いざなぎのみこと)」➩「伊耶那岐大御神(いざなぎのおおみかみ)」になってるよ?

よく気が付いたわね。
【大御神】は、特別な敬称なの。
日本書記では【大神】になってたから、古事記だけに登場する敬称だと思うわ。

どういう意味なの?

読んで字の如く、とっても偉い神様かな。
大神だけでも偉いのに、更に「御」を付けて2重に称えてるからね。
神様の最上位の敬称なのよ。

イザナギが昇格したってこと?何がキッカケ??

古事記の原文を読んでみると、三貴子が生まれて【伊邪那伎命大歡喜(イザナギ喜んだ)】の所が最後の【伊邪那伎命】なの。
つまり、三貴子誕生以降が【伊耶那岐大御神】表記となってるの。
三貴子には天照大御神がいるでしょ?

あ~、つまり天照【大御神】を生んだから伊耶那岐【大御神】になったんだね!

そういうこと。
「大御神の親だから、大御神!」って感じかな。
ちなみに大御神はイザナギ・アマテラス以外にも迦毛大御神(かものおおみかみ)がいて、大御神はこの3柱だけなのよ。

なるほど、勉強になったよ~♪
ところで迦毛大御神が大御神になった理由は?

...え~と、諸説あって良く分かんない...。

ふふふ...詰めが甘いな~。

ははは...むかつくな~。


「根之堅洲國(ねのかたすくに)」について

以前もお話したのですが、古事記では幾つかの世界(国)が登場します。
天界である高天原、地上世界の葦原中つ国、死の国の黄泉の国
この他にも世界はあるのですが、基本的にこの3つの世界が古事記で語られます。

さて、「根之堅洲國」ですが…これがなかなか分かりずらいのです。
この文でもスサノオが言っている「妣国」は「亡き母(イザナミ)の国」...つまり黄泉の国って事になると思うのですが、どうも根之堅洲國=黄泉の国ではないんですよね...。

少し前の回でご紹介しましたが、古事記では黄泉の国への入り口・黄泉平坂で、この世とあの世は繋がっていることになっています。
そしてこの後ご紹介するのですが、この「根之堅洲國」もまた黄泉平坂に繋がっている...ということが語られるのです。

この点をまとめると…
①スサノオが「亡き母のいる根之堅洲國へ行きたい」と言っている
②根之堅洲國にも黄泉の国にもこの世とあの世の入り口・黄泉平坂がある
とくれば、根之堅洲國=黄泉の国か?と考えてしまうのですが、違う世界の様なのです。

この二つの世界(国)が違うのは幾つか根拠があるのですが、個人的に「ん~…やっぱり根之堅洲國=黄泉の国じゃないんだな~」と思うエピソードが、かなり先なのですが古事記に登場します。
詳しく書くとネタバレになっちゃうので、ここでは省きますが…。
でも一応これだけ覚えておけば「根之堅洲國=黄泉の国じゃない」ってイメージ付くかな?ってポイントだけ書いておきますね。

まず黄泉の国は死者の国です。
つまり「生きてるものはいない」し「生き物が生まれることもない」はずです。
ですが、根之堅洲國には「ネズミとかムカデとか生きてるものがいる」んです。
更に「スサノオの娘も生まれて住んでいる」のです。

これらのお話ははいずれ物語が進むと出てきます。
この時点では根之堅洲國=黄泉の国と思ってしまうのですが、読み進めていくうちに「どうやら根之堅洲國=黄泉の国ではないな...」となると思いますので、覚えておくと良いのではないでしょうか。

以上で『古事記』本文上巻63~スサノオ追放~のご紹介はおしまいです。

次回は『古事記』本文上巻64~イザナギ怒って隠居する~をご紹介する予定です。

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『古事記』本文上巻62~スサノオが泣くと…~

こんばんは、いもみ🍠です。
本日は、『古事記』本文上巻62~スサノオが泣くと…~のご紹介です。

こんばんは、アキです。
主に翻訳と解説を担当しています。

【前回のあらすじ】
こうして、アマテラス・ツクヨミ・スサノオの3貴子はそれぞれイザナミの命に従いそれぞれの国を治めることになりました。
しかしイザナギが3貴子が統治出来ているか様子を見てみると、スサノオだけは統治を任された海原を治めずにとても長い顎鬚が胸元まで伸びる年齢になっているのにも関わらず、未だ激しく泣きわめいていました。
(註:啼伊佐知伎の【伊】から下の4字は音読みを用いて【いさちき】と読んで下さい。以下もこれに倣い読んで下さい)

昨日『神話に登場する神様は意外と人間的で、表情豊か』と書きました。
追記しましょう。
『神話に登場する神様は意外と人間的で、表情豊かだが、やはり人間的ではない
追記の理由はこの後の本文を読んでみればお分かりいただけます<(_ _)>

『古事記』本文上巻62~スサノオが泣くと…~

【原文と読み方】
【原文】
其泣状者 青山如枯山泣枯 河海者悉泣乾
是以 惡神之音 如狹蠅皆滿 萬物之妖悉發

【読み方】
其(そ)の泣く状(さま)は青き山は枯(か)れ山の如(ごと)く泣き枯らし、河海(かわうみ)は悉(ことごと)く泣き乾き、
是(こ)れを以って惡(あ)しき神之(の)音(なり)
狹蠅(さばへなす)如く皆(みな)滿(み)ち、萬(よろず=万)の物之妖(もののけ=物の怪)悉(ことごと)く發(た=発)つ

【訳】
スサノオがあまりに激しく泣くので、山は枯れ、川も海も干上がってしまうという有様でした。
泣いてばかりで海原を統治しないために、悪しき神々の気配が世界に満ちあふれ、あらゆる荒ぶる神々はますます盛んになりました。

【スサノオMemo】

【解説】
其泣状者 青山如枯山泣枯 河海者悉泣乾
「状」は音読みの「じょう」、名のりの「かた」などがありますが、ここは意味としての読み方「(あり)さま」と読みました。
今回は【スサノオが泣くと世界がどうなったのか】を書いている文なのです。

「青山如枯山泣枯」は何となく字でわかりますよね?
「青山が枯山になるまで泣き枯らし」って感じかな?

「河海者悉泣乾」も何となく字でわかりそうですが…。
「川も海も泣いたので乾いてしまった」。
ちょっとおかしくないですか?
泣いてる➩涙出る➩むしろ洪水では??…みたいな。

でも「山が枯れてる」のですから、ここはどう考えても「川や海が干上がった」という感じにならないと不自然ですよね?
若しくは「川や海が荒れた」感じか?とも思ったのですが、「河海者悉泣乾」の「乾」という字があるのでやはり「干上がった」のだと思わざるを得ません。


是以 惡神之音 如狹蠅皆滿 萬物之妖悉發
「是以(是を以って)」はつまり「スサノオが泣いてばかりで海原の統治をしないことで」という事を指しているのでしょう。

「惡神之音」は「悪(あ)しき神の音(なり)」と読みました。
「音」は名のりの読み方で「なり」とも読みます。

「狹蠅」は難しいですね。
これは「さばえ(なす)」と読みます。
さも「知ってました感」出してますが、勿論知りませんでした!(*´σー`)エヘヘ
漢字を書き換えると「狹蠅」=「五月蠅」なので、こちらのほうがわかりやすいですね。
「さばえ」は「五月蠅(五月ごろの蠅の様に騒がしいの意味)」。
「なす」は「の様に」の意味です。
「騒がしい、荒ぶる」という意味があります。

「萬物之妖悉發」は「萬(よろず=万)の物之妖(もののけ=物の怪)悉(ことごと)く發(た=発)つ」と読みました。
この場合の「物之妖(もののけ=物の怪)」は妖怪と訳すより、「荒ぶる神」と訳す方が自然でしょう。
「發」は「発」です。
「盛ん」という意味があります。

直訳すると「悪神の音が皆に満ちて騒がしく、あらゆる荒ぶる神々がことごとく盛んになりました」という感じでしょうか。
これを「悪しき神々の気配が世界に満ちあふれ、あらゆる荒ぶる神々はますます盛んになりました」としました。

余談ですが、日本の妖怪の歴史は古くて『古事記』にも登場しています。
ちなみに当ブログにも、既に登場しています。
『黄泉醜女 (よもつしこめ)』…あのイザナギが黄泉の国で追いかけられた鬼女のことです。
実は彼女、鬼なので妖怪に分類されちゃうわけです。

日本の妖怪の種族としては、鬼・天狗・河童・狐・狸あたりが日本各地で登場しています。
この中でも有名なのが「日本三大悪妖怪」と呼ばれる妖怪ですね。
【日本三大悪妖怪】
・酒呑童子(しゅてんどうじ)➩鬼
・玉藻前(たまものまえ)➩九尾の狐
・天狗になった祟徳天皇➩天狗
...と言われています。


【悪しき神】について

「悪しき神」...悪いのに神様?
なんかおかしくない?

確かに「神様」というと、恩恵をもたらしてくれるってイメージが強いわね。
悪い霊的存在としてはむしろ「悪魔」とかよね。

何で神様にしちゃったの?

簡単に言っちゃうとね、昔の日本では人智の及ばない超常現象・霊的存在を「神」って呼んだからなのよ。

じゃあ、人にとって害があっても…?

「神」よ。

じゃあ、人智の及ばない霊的存在であれば原則…?

「神」よ。

じゃあ、外側がキューティクル、中間部をコルテックス、中心部をメデュラの3つの部分で出来ているものは…?

それは「髪」よ。質問じゃ無くてクイズになってんじゃん!アンタ、舐めてんの?

悪しきものも神なら、日本には悪魔はいないの?

古代日本には悪魔はいないわね。
これも簡単に言うと、日本は多神教だからなの。
多神教だから、良い神も悪い神もいるって事ね。
これに対し、一神教の国だと人に災いを与えるような存在は「悪魔」と呼ぶのよ。

なるほどね~…日本は多神教の民族文化なわけだ...。あ、そろそろサッカー始まっちゃう💦

...。(質問しといてそれかよ…)

以上で『古事記』本文上巻62~スサノオが泣くと…~のご紹介はおしまいです。

次回は『古事記』本文上巻63~スサノオ追放~をご紹介する予定です。

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『古事記』本文上巻61~スサノオ泣く~

こんばんは、いもみ🍠です。
本日は、『古事記』本文上巻61~スサノオ泣く~のご紹介です。

こんばんは、アキです。
主に翻訳と解説を担当しています。

【前回のあらすじ】
次にイザナギは月讀命(つくよみのみこと)に「ツクヨミ、汝は夜之食國(よのおすくに)を治めよ」と仰せになり、統治を委ねられました。
(註:夜之食國の【食】の字は【袁須(おす)】と読んで下さい)
次にイザナギは建速須佐男命(たけはやすさのおのみこと)に「スサノオ、汝は海原(うなはら)を治めよ」と仰せになり、統治を委ねられました。

日本神話に限りませんが、神話に登場する神様は思っている以上に人間的です。
喧嘩したり、恋愛したり、嫉妬したり...喜怒哀楽があり感情豊かなのです。
人は勿論泣きますが、神様が泣くとどうなっちゃうんでしょうか…というお話です。


『古事記』本文上巻61~スサノオ泣く~

【原文と読み方】
【原文】
故 各隨依賜之命 所知看之中
速須佐之男命 不知所命之國而 八拳須至于心前
啼伊佐知伎也(自伊下四字以音 下效此)

【読み方】
故(かれ)各(おのおの)依(よ)せ賜(たま)いし命に隨(したが)い知らし看(め)す中に
速須佐之男命(たけはやすさのおのみこと)命ぜらるる國を不知(しらさず)りて、八拳須(やつかひげ)心前(むなさき)に至るまで
啼き伊佐知伎(いさちき)也
(【伊】自(よ)り下の四字は音を以いる 下も此れに效(なら)う)

【訳】
こうして、アマテラス・ツクヨミ・スサノオの3貴子はそれぞれイザナミの命に従いそれぞれの国を治めることになりました。
しかしイザナギが3貴子が統治出来ているか様子を見てみると、スサノオだけは統治を任された海原を治めずにとても長い顎鬚が胸元まで伸びる年齢になっているのにも関わらず、未だ激しく泣きわめいていました。
(註:啼伊佐知伎の【伊】から下の4字は音読みを用いて【いさちき】と読んで下さい。以下もこれに倣い読んで下さい )

【解説】
故 各隨依 賜之命 所知看之中
かなり読みづらい文でした。
一応「故(かれ)各(おのおの)依(よ)せ賜(たま)いし命に隨(したが)い知らし看(め)す中に」と読んでみましたが…どうなのかな?
でも意味としては難しくないと思います。
「各隨依 賜之命」は「各々が賜った命に従って~」という感じでしょう。
詳しく書くと「アマテラス・ツクヨミ・スサノオの三貴子は各々、イザナギから賜った統治の命令に従って~」で良いと思います。

「所知看之中」の部分は「(各々が)統治している中(様子)を看る」って感じですかね。
つまり「イザナギが三貴子の統治している様子を見ると~」でしょうか。


速須佐之男命 不知所命之國而
「不知所命之國而」も読みが難しかったです。
「命ぜらるる國を不知(しらさず)りて」と読みましたが、ちょっと自信がありません...💦
ですが意味は大丈夫だと思います。
この前もやりましたけど「知」は「治める」という意味ですから、「不知」は「治めていない」という意味になるでしょう。
なのでこの文は「スサノオは統治を任された海原を統治せずに~」という意味になるかと思います。


八拳須至于心前 啼伊佐知伎也(自伊下四字以音 下效此)
「八拳須」は読めなくて調べました。
「やつかひげ」と読むそうです...いや~普通は読めないですよね~(言い訳)
「須」には「ひげ、あごひげ」という意味があるなんて初めて知りました!...いや~普通はわからないですよね~(言い訳2)
「八拳」は「十拳剣(とつかのつるぎ)」でもやりましたが「拳を8つ並べたくらいの長さ」の意味です。
つまり「八拳須(やつかひげ)」は「とても長い髭」という意味でしょう。
...いや~普通はわからないな~これは~(言い訳3)

「于」は「場所や比較」を表す言葉ですね。
読み方・意味としては「ここ(に)」辺りに成るでしょうか。

「心前」は「むなさき、こころさき」と読みます。
「胸元、みぞおち」を意味します。

以上から「八拳須至于心前」は「胸元まで伸びた長い顎鬚に至るまで」という意味ですかね…。
ここで「至るまで」の意味は微妙に難しくて「顎鬚の【長さ】」を表わす言葉では無くて、「顎鬚が胸元まで伸びるまでの【時間・期間】」を表わした言葉でないと意味が通じません。
ですからここは「とても長い顎鬚が胸元まで伸びる年齢になっても」と訳しました。

「啼伊佐知伎也(自伊下四字以音)」は、太安万侶の注釈(自伊下四字以音)を先に訳します。
(自伊下四字以音)➩「【伊】自(よ)り下の四字は音を以(もち)いる」➩「伊佐知伎の【伊】から下の4字は音読みを用いて【いさちき】と読んで下さい」です。

なので「啼伊佐知伎也」は「啼(なき)いさちき也(なり)」と読みます。
で、「いさちき」って何よ?となりますよね?
ご安心下さい!調べました!

「いさちる」とは「はげしく泣く、慟哭、泣き叫ぶ」といった意味です。
...いや~調べないとわからないな~これも~(言い訳4)

つまり「啼伊佐知伎(いさちき)也」は「激しく泣きわめく」という意味ですね。

以上で『古事記』本文上巻61~スサノオ泣く~のご紹介はおしまいです。

次回は『古事記』本文上巻62~スサノオが泣くと…~をご紹介する予定です。

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本日のオマケ

酔っぱらいの敗者の弁...本日はお休みです💦

こんばんは、いもみ🍠です。
本日は、『古事記』本文上巻61~スサノオ泣く~のご紹介予定でしたが…相棒で翻訳などを担当するアキちゃんが間違ってお酒を飲んでベロンベロンになっちゃったので、本日はお休みです…<(_ _)>💦

こんばんは、アキです。
主に翻訳と解説を担当していますけど、本日はただの酔っぱらいです…う~…ひっくっ

【本日のあらすじ】
今日はサッカー日本代表の試合。
観戦しながらピザとお酒で舌鼓を...と買い込んでいたのですがブログの内容を考えてたらアキちゃんが「少しだけなら...」とお酒を...。
私も「じゃあ、ちょっとだけ…」と。
結局7時前にはストロング缶5本くらい空けちゃってサッカー始まる前に私達は退場になってしまいました。
ちなみに相棒はまだ起きられずフガフガしてます…

今後暫くはお酒封印します…
いつもご覧になって下さる皆様、どうもすいませんでした<(_ _)>💦💦



本日は以上です。

次回こそは『古事記』本文上巻61~スサノオ泣く~をご紹介する予定です。

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本日のオマケ

『古事記』本文上巻60~三貴子の統治(2)~

こんばんは、いもみ🍠です。
本日は、『古事記』本文上巻60~三貴子の統治(2)~のご紹介です。

こんばんは、アキです。
主に翻訳と解説を担当しています。

【前回のあらすじ】
アマテラス・ツクヨミ・スサノオの3柱が生まれた時、イザナギは大変お喜びになって、次の様に仰せになられました。
「私はこれまでに多くの子供を生んできたけれど、一番最後にこのような貴い3柱の子を得ることが出来た」
そしてイザナギは自らの首飾りを、珠が触れ合って音を鳴らす程紐を揺らしながらアマテラスに賜りました。
(註:【母由良邇】は音読みを用い【もゆらに】と読んで下さい。以下の【由良迦志】も【母由良邇】を【もゆらに】と読んだのに倣い、音読みで【ゆらかし】と読んで下さい)
イザナギは賜る時に「アマテラス、汝は高天原を治めよ」と仰せになり、統治を委ねられました。
この時の首飾りの珠の名を、御倉板擧之神(みくらたなのかみ)と言います。
(註:御倉板擧之神の【板擧】は【多那(たな)】と読みます)

三貴子の統治する国が決められていきます。
しかし...結果論なんですけど、ツクヨミの夜の食国以外は後々揉めるんですよねぇ...。


『古事記』本文上巻60~三貴子の統治(2)~

【原文と読み方】
【原文】
次詔 月讀命 汝命者所 知夜之食國矣 事依也(訓食云袁須)
次詔 建速須佐之男命 汝命者所 知海原矣 事依也

【読み方】
次に月讀命(つくよみのみこと)に詔(の)りたまはく
「汝が命(みこと)は夜之食國(よのおすくに)を知らせ」と事依(ことよ)せたまいき
(【食】を訓(よ)み、【袁須(おす)】と云う)
次に建速須佐男命(たけはやすさのおのみこと)に詔(の)りたまはく
「汝が命(みこと)は海原(うなはら)を知らせ」と事依(ことよ)せたまいき

【訳】
次にイザナギは月讀命(つくよみのみこと)に「ツクヨミ、汝は夜之食國(よのおすくに)を治めよ」と仰せになり、統治を委ねられました。
(註:夜之食國の【食】の字は【袁須(おす)】と読んで下さい)
次にイザナギは建速須佐男命(たけはやすさのおのみこと)に「スサノオ、汝は海原(うなはら)を治めよ」と仰せになり、統治を委ねられました。

【解説】
今回の訳は前回とほぼ同じです。
ですが、念のため幾つかポイントをおさらいしてみたいと思います。
詳しくは昨日の解説をご覧ください<(_ _)>
「知」は「取りしきる、司る」という意味があります。
「知事」とか分かりやすいですよね?
「事依」は「ことよ(せる)」と読みます。
「託す、委ねる」という意味ですね。

なので「詔 月讀命 汝命者所 知夜之食國矣 事依也」は「『ツクヨミ、汝は夜之食國を治めよ』と仰せになり、統治を委ねられました」という感じで訳せば良いと思います。

【統治の範囲について】

先ほど書きましたが、後で結構もめます。
何故揉めるかはネタバレに成っちゃうので今書きませんが…。
私も訳しながら読んでいて「あれ?そーだっけ??」みたいな認識でしたので今一度古事記の世界について振り返っておきたいと思います。

まず古事記に登場する国と、統治者を整理してみましょう。
高天原
➩神々の世界。統治者は昨日の訳でも出てきましたが、天照大御神ですね。
夜之食國
➩夜の世界。統治者は本日出たように月讀命です。
海原
➩世界、と言ってよいのか分かりませんが…統治者は本日出たように建速須佐男命です。
少し前に海神が誕生していますが、どうやら統治者では無かった様ですね。
黄泉の国
➩地底にある死の世界。統治者は黄泉津大神です。
根之堅州国
➩地下にあるとも海の彼方にあるとも。古事記では「木の根を通って行ったこと」「黄泉平坂」を通ることから地上と黄泉の国両方に繋がっている様な表現となっている。統治者は色々あって建速須佐男命です。
葦原中つ国
➩地上の世界。問題はココです。
イザナギが統治を命じたのは、高天原・夜之食國・海原。葦原中つ国は?って思いませんか??
私もイマイチ良く分からなかったのですが、後々のお話だと統治者は天照大御神なのです。

この辺を古事記で明確にして無かった様な気もするのですが…。
一応私なりの解釈(下記)で葦原中つ国の統治者は天照大御神だ、と思うようにしました。
※個人の感想なので正しいかは分かりません。

①『葦原中つ国(地上)を作ったのはイザナギとイザナミだ。だからイザナギの子であるアマテラスが葦原中つ国を相続・統治するのは自然だ
②『思い返せばオノゴロ島にイザナギとイザナミが降り立った時、地上から天界に繋がる大柱を建てていた。つまり地上と天界は繋がっている。だから高天原と葦原中つ国は一体になっている。だから高天原の統治を任されたアマテラスが天地を統治する神なのだ

...と言う訳で、それぞれの国の統治者が誰なのかは、この後読み進めていく上で頭の片隅に入れておいた方がいいと思います。

以上で『古事記』本文上巻60~三貴子の統治(2)~のご紹介はおしまいです。

次回は『古事記』本文上巻61~スサノオ泣く~をご紹介する予定です。

ここまで読んで頂きありがとうございました_(..)_
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本日のオマケ

『古事記』本文上巻59~三貴子の統治(1)~

こんばんは、いもみ🍠です。
本日は、『古事記』本文上巻59~三貴子の統治~のご紹介です。

こんばんは、アキです。
主に翻訳と解説を担当しています。

【前回のあらすじ】
そしてイザナギが左の眼を洗った時に現れた神の名を天照大御神(あまてらすおおみかみ)と言います。
次に右の眼を洗った時に現れた神の名を月讀命(つくよみのみこと)と言います。
次にお鼻を洗った時に現れた神の名を建速須佐男命(たけはやすさのをのみこと)と言います。
右に記した(※ブログでは上から下に読んでいきますが、古事記は右から左に読んでいきます)様に、八十禍津日(やそまがつびの)神から速須佐男命(はやすさのをのみこと)までの14柱の神々は、イザナギがお身体をすすいだことで誕生した神様です。

イザナギの禊で誕生した神々は多いのですが、イザナギは三貴子を「貴い」と言っています。
何を以って「貴い」と言ったのか...?
どうやって貴賤が分かるのか...?
…神様だから未来が見えたのでしょうか?


『古事記』本文上巻59~三貴子の統治~

【原文と読み方】
【原文】
此時 伊邪那伎命 大歡喜詔
吾者 生生子而 於生終 得三貴子
即 其御頸珠之玉緒 母由良邇(此四字以音 下效此)取由良迦志而
賜 天照大御神 而詔之 汝命者所知高天原矣 事依而賜也
故 其御頸珠名 謂 御倉板擧之神(訓板擧云多那)

【読み方】
此(こ)の時、伊耶那岐命(いざなぎのみこと)大(おお)いに歡喜(かんき)し詔(の)りたまひしく
「吾は子を生み生みて、生みの終わりに於(お)いて、三柱の貴(とうと)き子を得たり」
即(すなわ)ち、其(そ)の御頸珠(みくびたま)之(の)玉の緒、母由良邇(もゆらに)取り由良迦志(ゆらかし)
(【母由良邇】の此の四字は音を以(もち)いる 下も此れに效う)
天照大御神(あまてらす)に賜(たまわ)いて詔(の)りたまはく
「汝が命(みこと)は高天原(たかあまはら)を知らせ」と言依(ことよ)さして賜(たまわ)りき
故(かれ)其(そ)の御頸珠(みくびたま)の名を、御倉板擧之神(みくらたなのかみ)と謂(い)う
(【板擧】を訓(よ)み、【多那(たな)】と云う)

【訳】
アマテラス・ツクヨミ・スサノオの3柱が生まれた時、イザナギは大変お喜びになって、次の様に仰せになられました。
「私はこれまでに多くの子供を生んできたけれど、一番最後にこのような貴い3柱の子を得ることが出来た」
そしてイザナギは自らの首飾りを、珠が触れ合って音を鳴らす程紐を揺らしながらアマテラスに賜りました。
(註:【母由良邇】は音読みを用い【もゆらに】と読んで下さい。以下の【由良迦志】も【母由良邇】を【もゆらに】と読んだのに倣い、音読みで【ゆらかし】と読んで下さい)
イザナギは賜る時に「アマテラス、汝は高天原を治めよ」と仰せになり、統治を委ねられました。
この時の首飾りの珠の名を、御倉板擧之神(みくらたなのかみ)と言います。
(註:御倉板擧之神の【板擧】は【多那(たな)】と読みます)

【解説】
此時 伊邪那伎命 大歡喜詔 吾者 生生子而 於生終 得三貴子
「大歡喜詔」は「大(おお)いに歡喜(かんき)し詔(の)りたまひしく」と読みました。
「歡喜」は「歓喜(非常に喜ぶこと)」ですね。

「吾者 生生子而 於生終 得三貴子」
「生生子而 於生終」が特に読みずらいですよね...。
これを私は「子を生み生みて、生みの終わりに於いて」と読みました。
これを訳すると…
「子を生んで生んで、この生むことの一番最後に」でしょうか。
これだと分かりずらいので次の様に訳しました。
「私はこれまでに多くの子供を生んできたけれど、一番最後にこのような貴い3柱の子を得ることが出来た」


其御頸珠之玉緒 母由良邇(此四字以音 下效此)取由良迦志而
「御頸珠」は「みくび(の)たま」と読みます。
これはつまり「首飾り」のことですね。
「緒」は「糸、紐」の意味です。
「御頸珠之玉緒」は「首飾りの玉の紐」となります。

「母由良邇(此四字以音 下效此)取由良迦志而」は太安万侶の注釈(此四字以音 下效此)がポイントです。
まず注釈に従って読んでみましょう。
(此四字以音 下效此)➩「【母由良邇】の此の4字は音読みを用い【もゆらに】と読んで下さい。以下もこれに倣い読んで下さい」で良いと思います。

ここでポイントなのは「下效此」➩「下も此れに效(なら)う」➩「以下もこれに倣い読んで下さい」です。
これをこの文に合わせて少し長めに言い換えると「【母由良邇】は音読みを用い【もゆらに】と読んで下さい。以下の【由良迦志】も【母由良邇】を【もゆらに】と読んだのに倣い、音読みで【ゆらかし】と読んで下さい」です。

なのでこの文は「母由良邇(もゆらに)取り由良迦志(ゆらかし)」と読みます。
とは言え、読めた所で「もゆらに取りゆらかし」って何だ?って話ですよね。

検索して調べた所、意味は次の様な感じでした。
「もゆら」➩玉などが触れ合って出す音を表す
「ゆらかし(揺らかし)」➩玉などを触れさせて音を立てさせる

つまりこういう事でしょう。
①イザナギはアマテラスに首飾りを授けようとした
②首飾りは珠(玉)に穴を空けて紐で繋いだ形状をしていた
③なので授ける時に珠(玉)が揺れて、触れ合って音が鳴った...という感じです。
随分細かいところまで描写しています

この文をそのまま訳すと「そしてイザナギは自らの首飾りをアマテラスに賜ったのです。お渡しになる時に首飾りの紐が揺れて珠が触れ合って音を鳴らしていました」という感じかな?と思います。

これを「イザナギは自らの首飾りを、珠が触れ合って音を鳴らす程紐を揺らしながらアマテラスに賜りました」と短くして訳しました

でもですね…おかしいと思いませんでしたか?
イザナギは禊の時全てを脱いでいます。そして顔を洗った直後に三貴子が誕生していますから、この時点でイザナギはスッポンポンの裸でいる筈なのに、首飾りはどこから出したの?って私は思いました。
全裸の父から首飾りを渡された娘の気持ちはどうだったのだろうか…?
「首飾りの紐が揺れて珠が触れ合う音がした...」という細かい描写までしてたのに、これはどういうことなの...?
そんなことを考えながら訳しました…。

汝命者所知高天原矣 事依而賜也
「汝命」は「汝が命(みこと)」、ここはイザナギが語りかけている相手がアマテラスですから「命=アマテラスの命(みこと)」を指しています。

「知高天原」はちょっと難易度が高いかな...?と思ったけれど、調べてみれば結構簡単でした。
「高天原」は「天界、天津神が住んでる世界」のことですね。
それを「知る」とは?
知を調べると「取りしきる、司る」という意味があります。
例えば「知事」みたいな感じの意味ですね。
つまり「知高天原」は「高天原を治める」という意味になります。

「矣」は文末助字の一つで、これを読むわけではありません。
一応読み方としては音読みで「い」と読むことが出来ますが…読みは必要ないと思います。
ただ、意味としては省けません。
「矣」は句の終わりに用いる助字で、断定・詠嘆などを意味します。
強いて訳すなら「~である」とか「~だなぁ」でしょうか。
ここではイザナギがアマテラスに対し統治を命じているので...

イザナギ「アマテラス、汝は高天原を治めよ」【断定】
イザナギ「アマテラス、汝は高天原を治めるのだなぁ」【詠嘆】
どちらがふさわしい訳かは一目瞭然ですよね。

「言依」は「ことよ(せる)」で合っていると思います。
意味も「託す、委ねる」でシックリきます。
『でも「ことよせる」って「言寄(事寄)」じゃないの...?』とは思いました。
「まぁ、意味も音も合うしいいか...」と妥協して先に進むことにしました。


故 其御頸珠名 謂 御倉板擧之神(訓板擧云多那)
「御倉板擧之神(訓板擧云多那)」は太安万侶の注釈(訓板擧云多那)➩「【板擧】を訓(よ)み、【多那(たな)】と云う」➩「御倉板擧之神の【板擧】は【多那(たな)】と読みます」で、「みくらたなの神」と読みます。

イザナギがアマテラスに高天原の統治を任せる重要なシーンで登場するので、重要な神様(珠?)だと思うのですが、日本書記には登場しませんしこの後出てこなかった気がします…。



以上で『古事記』本文上巻59~三貴子の統治(1)~のご紹介はおしまいです。

次回は『古事記』本文上巻59~三貴子の統治(2)~をご紹介する予定です。

ここまで読んで頂きありがとうございました_(..)_
本日のおまけは一番下にあります。

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